「タリフマン」を自称するトランプ大統領は「愛と宗教以外の美しい言葉は関税だ」とうそぶいている。そして、「目には目を、関税には関税を」と述べて、相互関税を導入しようとしている。中国には2018年の25%の追加関税に加えて25年1月に10%を追加し、35%の関税が課されている。トランプ大統領は、貿易赤字は経済と安全保障の脅威と発言し貿易赤字を目の敵にしている。
トランプ関税で貿易赤字は減るのだろうか。答えはNOである。2018年に対中追加関税が課され、バイデン政権でも続いたが、米国の貿易赤字は減らなかった。米国の貿易赤字の原因は米国内にあるからだ。米国の貿易赤字の要因は米国内で貯蓄に比べ投資が過剰なことだからである。なぜなら、GDP=消費+投資+輸出-輸入 GDP=消費+貯蓄 であり、消費+投資+輸出-輸入=消費+貯蓄 となり、輸出-輸入(貿易収支)=貯蓄-投資 となるからだ。また、貿易赤字、そして経常収支赤字でも資本流入により資本収支が黒字となり相殺されている。そもそも輸入により優れた商品やサービスを入手し生活を豊かにしているのは米国の消費者である。
相互関税も効果が疑問視される。相互関税により貿易相手国の関税を引き下げる効果が期待されるが、相手国が関税を引き下げても米国製品に競争力がないと輸出は伸びない。日本の自動車関税はゼロであるが、街中で米国車はみかけない。EUが10%の自動車関税を米国並みに2.5%に引き下げても米国からEUに自動車輸出が増加することは期待できないだろう。