日本車の牙城と言われるタイで中国製のEVが急増している。タイ経済の第一人者である助川成也国士館大学教授によると、2023年の中国車の販売台数はBYD3万台、MG(上海汽車)2.7万台、NETA1.4万台、長城汽車1.3万台などで合計8.7万台となり、シェアは11%となった。そのため、長年タイ自動車市場で約9割の市場シェアを誇っていた日本車のシェアは78%に低落した。バッテリー型EV車は23年に前年比7倍増となりシェアは9.5%を占めた。EVの躍進の主役は中国車であり、中国からの輸入である。
助川教授によると、中国からのEV輸入はASEAN中国FTA(ACFTA)を利用している。タイはACFTAでガソリン車やディーゼル車は関税撤廃の例外品目としており80%に関税が課せられる。しかし、EV車は例外品目となっていない。ACFTAの交渉が行われたのは約20年前だが、EV化の潮流を予想できなかったため関税撤廃の対象になっていることが中国からのEV車輸入急増の理由である。中国のEVメーカは2024年からタイで現地生産を始める予定である。タイには自動車部品産業が集積している。タイ製の部品を利用し製造された中国メーカーのEVがタイ原産と認定されればAFTAやRCEPなどによりタイで製造された中国ブランドEVが他のASEANなどに流入する可能性があると助川教授は指摘している。ASEANの家電産業では日本ブランドが大きな市場シェアを占めていたが、韓国そして中国製品との競争に敗れ今は見る影もない。家電の轍を踏まないためにも中国製EV車への対応が急務である。
日本の家電はアジアでは壊滅状態ですが、40年前に日本の家電関係者は韓国や中国が追い付くことは絶対にないと言っていたそうです。同じことが自動車に起きつつあります。タイでは、タイ政府がEV育成を日本メーカーに提案したところ日本メーカーは断り、タイ政府は中国に頼み込んだそうです。過信により状況を見誤ったのだと思います。20年後、30年後に日本の自動車メーカーA社は中国企業が買収、B社は台湾企業が買収、C社は経営破綻などという状況になるのではと懸念しています。現にホンハイ(台湾)による日産買収の報道がありました。