2022年に過去最高を記録した米国の対中貿易は2023年に16.7%の減少となり、とくに輸入は20.3%の大幅減(輸出は4.0%減)となった。中国は2007年以降最大の輸入先だったが、2023年はメキシコに抜かれ第2位となった。米中対立に起因するサプライチェーン再編が影響しており、カナダとメキシコからの輸入額を合計すると全輸入額の3割を占める。近隣諸国から輸入をするというニアショアリングが進められていることが示されている。
米国の対中輸入減少の要因はノートパソコンとスマートフォンである。ノートパソコンは137億ドルの減少(27.9%減)、スマートフォンは55億ドルの減少(10.9%減)だった。中国に代わって輸入が増えたのは、ノートパソコンはベトナムで約4倍増、スマートフォンではインドで約3倍増だった。ベトナム、インドからの輸入急増の要因として台湾企業が中国から生産拠点を移管していることがあげられる。台湾企業の動向に詳しい朝元照雄九州産業大名誉教授によると、台湾企業は中国からASEANに生産拠点を移管する一方で中国の生産拠点を中国企業に売却している。朝元名誉教授は、中国での「赤いサプライチェーン」と「非中国のサプライチェーン」に台湾企業のサプライチェ―ンは2分化されているとみている。非中国のサプライチェーンはベトナムやインドで展開されている。非中国のサプライチェーンは米国のフレンドショアリング政策に対応したものである。
サプライチェーン再編は、フレンドショアリングへの対応に加えて、中国での人件費などコスト増加と優遇措置消滅、知的財産権侵害、反スパイ法による駐在員の安全リスク増加、中国のデフレスパイラルによる需要減という3大要因があると朝元名誉教授は指摘している。中国企業自体もメキシコなどへの脱中国の動きをみせており、中国からのサプライチェーン再編は大きな趨勢となっていると朝元教授は論じている。スマートフォンだけでなく半導体を含めIT産業の生産基地としてインド、ベトナムはますます重要になってきていることに注目すべきである。
参考:朝元輝雄「米中対立、台湾企業の対中戦略の変化-フレンドショアリングへの移行、中国から東南アジア、インドへ―」『経済安全保障を巡る動きとサプライチェーンの再編』北陸環日本海経済交流促進協議会(北陸AJEC)、2024年4月。
中国企業自体もメキシコなどへの「脱中国」の動きをみせており→「脱米国」だと思います。編集できますよ。