岡倉天心は1903年に刊行された「東洋の理想」で「アジアは一つ(Asia is one)」という有名な言葉を巻頭に書いている。現状のアジアは言うまでもなく一つではない。一つどころか領域問題などで対立している国も多い。「一つ」には、色々な意味がある。政治的に一つになることは無理であり、強国や大国により小国を併合することにつながりかねない。しかし、経済的に一つになること、つまり経済統合に向けては様々な努力が行われている。
東南アジアでは10か国(ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、ミャンマー、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)でASEAN経済共同体(AEC)を2015年末に設立した。ASEANは平和を目指して政治安全保障で協力を行う政治安全保障共同体、教育、文化や環境問題などで協力や交流を行う社会文化共同体も設立しており、3つの共同体からなるASEAN共同体を作っている。日本では一時期アジア共同体あるいは東アジア共同体がブームとなり、多くの本が刊行されたりしたが、燃えやすく冷めやすい国民性のせいか最近はすっかり下火になってしまった。しかし、ASEANではすでに共同体が設立され具体的な協力がなされ成果をあげていることに注目すべきである(続く)。
かつて大東亜共栄圏という日本が主導した社会文化共同体があった。これは欧米列強の植民地政策を土台にしたもので、アジア各国の主権を無視したものだったと思います。
台湾領有、韓国併合、満洲国独立、南進政策など、これは日本の軍エリートが己の出世のために徒党を組んだ一部のグループが暴走した軌跡ですね。それにひきかえ、岡倉天心の考えはアジア人の心を持っていたと思います。東洋の理想は再考してみたいです。